23歳の肖像
毎日、毎日、空はグレーだった。
思いっきり、斜光を突きつける訳でもなく、
嘲笑うように、からだを濡らすのでもなく…
いっそのこと吹き飛ばされ、消え去るといいとすら思ってたが、それすらも。
まちに出ても、無愛想な空気に嫌気がした。
通りを歩く人々は、なにを欲し、なにに生きようとしているのだろう。
ああ、道を、ぼくの行くべき道を、照らしてほしい。
真っ暗闇ならまだましだ。
茫洋とした霧よ、散ってくれ。
ぼくは、疲れた足で、湖の見える野原まで来た時、慟哭した。
土を掴み、鼻水は垂れ、いつしか夢に入った。
故郷のことを想った。
幼き、愛されたぼく自身を羨んだ。
熱狂的な恋すらも、微笑ましかった。
ぼんやり目を開くと、野原で、両手を広げていた。
風もなく、鳥の歌も聴こえず、泣くことも尽きてしまったぼくは、
動かぬ無常の空を、ただ見つめていた。
遠くで、母と子のはしゃぐ、声がした。