ふなたび

これからぼくは船に乗って、

誰も知らないところへ行くんだ。

虹色のクジラ。雲まで跳ねるイルカ。

 

さあさあみんな乗り込んで。

ほらほらおいで。ビルには何も無い。

夢もない。そうだろう?

 

この船は電車にも変わるんだ。

きっと変わるさ。君がいればね。

桜色の空、紅葉色の街。

 

さあさあみんな乗り込んで。

ほらほらおいで。時間を気にするな。

君は君だ。そうだろう?

 

どこへ行くのかだって?

そんなの知ってちゃつまらない。

みんなで一緒に、回せ回せ。

どんどん進め、旅は長いぞ。 

 

さあさあみんな乗り込んで。

グッド・バイ

私は偽善に反抗する。

恐ろしさからの大いなる反抗である。

 

人は人に怯えながら、気をつかって疲れながら死んでいくものなのでしょうか。

 

恋人にすら偽善を使わざるを得なくなり、

それに付き合いながら死んでいくものなのでしょうか。

 

結局は私にしか素直になれないのでしょうか。

もしかすると、私にすら偽善する人もいるでしょう。

酒にまかせて人と話そうと、それは酒が饒舌にさせているだけで私の純粋な言葉ではない。

 

この世を生きて、賞賛されるためにその偽善とやらを使わないといけないとすれば、

私はこの世から別れるしかない。

 

認められも、憎みもされない、

どこかでぽつんと咲く、小さな花のように。

 

ありがとう。

グッド・バイ。

狼の夜想曲

信じられるものは多くなく

ほとんどが裏切られることになり

月光さす丘に臆病な狼が泣く

 

その声に耳を貸すものはなにもなく

無数の星も彼ら自身を愛すだけ

 

戯れる風が唯一の友で

それすらも少し冷たい

 

やつれ、ほそく、びくびくとした私のからだ

狂った目はそれでもひとつの赤い月を睨む

それでもなにも応えはしない

 

ああ、静かな夜は安らぎなど漂いもせぬ

丘の麓の人間たちはもってのほかだ

 

たったひとつ

多くは求めない

なにか信じさせてくれ

包み込んでくれ

 

私は泣く、吠える

気にしないで!

あいつに聞いたよ

ずいぶんイカした男と一緒になったんだってね。

いや、そんなこと少しも興味なんてないさ。

あの日から眠れないんだけどね。

 

幸せになりな。

幸せになりな。

ぼくは大丈夫さ。

気にしないで!

 

さてさて、どうするかな。

窓の外は昨日からずっと曇ってて

愛犬を散歩に連れ出すのも嫌になってるのさ。

あの日からずっと沈んだままだよ。

 

幸せになりな。

幸せになりな。

ぼくのことはどうだっていいさ。

気にかけないで!

 

さてさて、どうするかな。

小鳥を捕まえにいこうか。

ハハ、そんな勇気なんかありゃしない。

あの日からすっかり弱っちまったよ。

 

幸せになりな。

幸せになりな。

ぼくのことはどうでもいいのさ。

 

そう、気にしなくていいんだよ!

きみの花

きみが一粒の涙を流すたび、

きみのための言葉ではなく、

ただ、ぼくのための言葉だったと気づく。

 

きみが遠く離れるたび、

きみの背中をあたためることもせずに、

ただ、ぼくのからだをあたためようとしていた。

 

いつしか消えていきそうになったとき、

どれほど傷つけたかを知る。

どれほど美しい人だったかを知る。

どれほど好きだったかを知る。

 

望んだ未来を、壊しているのはぼくだった。

 

消すことのできぬ過去の罪。

けれど、種を、また植えて

大きな、大きな、きみの笑顔の花を咲かせてみせよう。

その透き通った、純粋な笑顔の花を。

 

さあ、海に向かって、歌おう。

ふたりの夢の、カメラを持って。