ペヤング焼きそば
段ボールを開けると、故郷のあたたかい香りがする。
トイレットペーパー、洗濯用品、チョコレート、お茶漬け、頼んでおいたインスタントコーヒー。
そして、小さいころから好きだったペヤング焼きそばが六つ、母からの手紙。
夕方に降る雨の音と、寂しく見つめてくる台所の電気は、手の血管をいやに浮き立たせる。
ひとつ、ため息とも感動とも取れる呼吸をして、それらを取り出す。生活が溢れている。
本をじっと読み続け、ぼんやりしていた僕はお腹が減っていることにふと気付く。
読書は空腹すら忘れるらしい。
さっそく、ひとつペヤング焼きそばを食べることにした。
お湯が沸くまで、谷川俊太郎の詩を読んだ。わかってるのかわかってないのかわからない。
お湯を注いで、三分待つ。
谷川俊太郎の詩を読んだ。やっぱり、わかっているのかわかってないのかわからない。
なにかは感じた。
できごろになり、お湯を捨てる。
湯切り口を発明した人は、変わった人なんだろうと思う。
スパイスを、香水のように振りまけて
食べましょう。
うん、故郷の長い記憶の、味がする。