ぼくの部屋
ぼくの部屋は、全ての俗世界から遮断された
唯一の芸術的な異空間に満ちている。
棚には書籍が並び、並び切れないものは積み重ねられている。
その表情は叙情を帯び、太陽が輝くときには溌剌とし、雲が覆う日にはうつむき気味だ。白い雨が降ると、それらははらりと雫をこぼす。
月が顔を出す美しい夜には、僕に夢をプレゼントする。
僕は小さくて、か弱いスタンドライトを頼りに全身を委ねるように活字を読みつづける。
そのとき、僕はやさしい雲に乗って僕を離れる。そして、未だ見ぬ僕を運ぶ。
行先も知らぬ汽車に揺られる気分である。
欲を脱し、いや、忘却し、ただひたすらに対話する。誰とも知らぬ夢をかたどった何者かと対話する。
こうして、今日が過ぎ、明日が来る。長いのか短いのか未知の命も、こうして過ぎてゆく。