時代
ながい時代がありまして、
緑は心を映えている。
ながい時代がありまして、
海は変わらず夕陽をうつす。
ながい時代がありまして、
雪は郷愁を積もらせる。
ながい時代がありまして、
人は人を変えようとした。
ながい時代がありまして、
人は装飾に凝りすぎた。
ながい時代がありまして、
私は無邪気に生まれてきた。
ながい時代がありまして、
私はいま寂寞に戦慄する。
ながい時代がありまして、
私は慈悲も忘れてしまった。
川辺に座って、手を開き
めいいっぱい陽に透かす。
触れることも、見ることも
逆らうこともできないあいつらを
私は憎む。
靴音さえも鬱陶しい。
それでも川は悠然と流れて、
時代も流れると知ったとき、
私は怠惰の美徳を言い訳する。