二十三歳、溺れる

三島由紀夫の「潮騒」を、こんな時間まで

ただただ、黙々と、読んでいた。

 

言葉を、文学を、精神から愛しているんだと強く、強く感じる。

 

生きてるって思える。

生きようと思える。

 

僕はまだ子どもで、言葉に対して不器用で、

小説や詩に触れる度に、贅沢な焦燥感の波に溺れ死にそうになる。

 

もっと、もっと、言葉を愛し、文学を愛し、

己の血肉にしたい。

そのために、時間を抱いて、懸命に、若さなりに、もがいて、表現したい。

 

どこかで、光ってる僕が待っている。

幻なんかじゃないと思う。

二十三歳の僕は、非常に言葉の美貌に惚れ込んでいて、己の殻を突き破ろうと、この手が傷んで泣いている。

ああ、頬を拭ってほしい。

 

そうして、ウイスキーをぐいっと飲み干して、ぼんやりと本棚を、光る己を見つめてる。